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『アルケミスト』と2人の女性

人は3回情報に触れたらすごく気になるから宣伝は繰り返しが大切、とよく言われますが、本についてもそうですよね。
特に最新刊で宣伝をばんばんしているわけではないのに、なぜか3回続けてその書名に触れると、もうこれは私に読めと言っていることね、と感じます。

今回のそれは、パウロ・コエーリョ著『アルケミスト~夢を旅した少年~』でした。
1回目は雑誌の「愛読書紹介」のコーナーで。2度目は書店でたまたまぱっと背表紙が目に入り、3度目はラジオで唐突に書名が出てきて。ずーっと以前に先輩が愛読書として挙げられていたのでも気になっていました。

日本語版は1994年に刊行されたというので、もう30年も前のものですね。
星の王子さまに並び称される物語なのだそうで、全世界で8500万部売れている大ベストセラーということです。

半飼いの少年サンチャゴは、その夜もまた同じ夢を見た。一週間前にも見た、ピラミッドに宝物が隠されているという夢――。少年は夢を信じ、飼っていた羊たちを売り、ひとりエジプトに向かって旅にでる。
アンダルシアの平原を出て、砂漠を越え、不思議な老人や錬金術師の導きと、さまざまな出会いと別れをとおし、少年は人生の知恵を学んでいく。
「前兆に従うこと」「心の声を聞くこと」「何かを強く望めば宇宙のすべてが協力して実現するように助けてくれること」――。
長い旅のあと、ようやくたどり着いたピラミッドで、少年を待ち受けていたものとは――。人生の本当に大切なものを教えてくれる愛と勇気の物語。

amason紹介ページより

童話かな?自己啓発本かな?スピリチュアルな本かなと思いながら読むと・・・
今書籍化のためのライティングをお手伝いしているお二人の女性を、もっとよく知るための参考書として読みなさいということだったのか、という内容でした。

全く別の方面から来たお仕事で、著者のお二人はキャラが全然違うのですが、全力でやりたいことをやる姿がそれぞれ主人公の少年サンチャゴのようだし、大いなる力に導かれているようなところ、「経験」を大切にするところなどが、もう『アルケミスト』の世界を地でいくお二人なのです。

優れた小説って、人間の中にある願望とか可能性とかを絶妙な登場人物や場面の設定なので描き出すものなのでしょうね。だからたくさんの人が、自分に重ね合わせて読めるのでしょうし、勇気をもらったり、人生の指針にできたりするのかもしれませんね。

私の好きな一節をご紹介します。

少年も本を持っていた。そして旅の最初の二、三日間はそれを読もうとした。しかし、キャラバンを観察したり、風の音を聞いているほうが、もっとずっとおもしろいとわかってきた。自分のらくだをもっとよく知るためには、どうすればいいか学び、らくだとの友情をきずくやいなや、彼は本を投げすててしまった。少年はそれまで、本を開けるたびに何か大切なことを学べるという迷信を持っていたが、ここでは本は不必要な荷物だと決めたのだった

アルケミスト 角川文庫 P89より

情報があふれる今、インターネットの情報で知った気分になってしまうけれど、きっと100の知識より1の経験なんですよね。

書を捨てよ、町へ出ようーまさに寺山修司の書のタイトル通りだなぁと思います(読んでないけど)。

気がつけば2024年もあと1カ月で半分終わってしまうけれど、もっともっと「経験」することを意識しよう!と思った読書体験でした。