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映画『BLUE GIANT』(2024‐6)

今年は、月3本くらいは映画(ネット配信含む)を観ようと思っていたのに、3月は1本、4月は0本でした。年何百本も映画を観ている方って、どうやって時間を作っているのかな。

子どもたちを送り出して、ひとりでの朝食のお供に、と軽い気持ちで観はじめた『BLUE GIANT』。
これでもかというほど引き込まれて、一気に2時間観ました。
これは映画館で観たかった…。

この映画は、高校を卒業したばかりの宮本大が、世界一のサックス奏者を目指して上京し、そこで世間に見つかるまでを描いた劇場版アニメ。漫画で大人気だった作品の映像化です。
「音が聞こえてくる漫画」と原作は言われていたそうですが、それを実際に映像化するのはとんでもないプレッシャーだっただろうなぁなんて、いかにも素人的な感想をまず持った私。
私は音楽のことは全く詳しくありませんが、映画のために書き下ろした楽曲を、世界的なジャズ奏者たちが演奏したものを先に収録し、そこに映像を合わせるというこだわりを持って挑んだのだそう。

かっこいいのです、まじでかっこいい。
音楽も映像も。
脳天が痺れる感じ?
これが音楽に酔うという感じなのでしょうかね。

そしてちょうど私が「衝動」とか「熱」のことを考えていたということもあり、ジャズに取りつかれた主人公、大のまっすぐな態度がもうまぶしくてまぶしくてうっとりするほどでした。
それに他の登場人物たちもそれぞれとっても魅力的なのですよね…。
4歳からピアノを続け、類まれなるテクニックを持ちながらもどこか世間を見下したような態度の雪祈。
全くの初心者から、大の音楽に魅了されてドラムを始める玉田。
そして彼らの周りの大人たち。

映画の中では、大が世間に見つかり、のし上がっていくまでのシンデレラストーリー(というのかな?)がメインでしたが、原作ではきっとこんなシンプルなストーリーでもないのでしょうね。
ここまでの熱を持ち、練習に打ち込み、そして才能もあってそんな自分を疑わない…
そういう人は稀だからこんなにまぶしく感じるのでしょうか。

息子がスポーツをしていて思うのですが。
息子がクライミングの大会で一緒になることがある、息子と同級生のある少年は、小6の段階でもう将来の日本のクライミング界を担っていくのだろうなぁという風格も実績もある子です。
クライミングが大好きで、直接聞いたことはないけれどおそらく世界を目指していて、週7日練習を続け、まっすぐで、関係ないけどイケメン。きっと宮本大のように、自分が上りつめるために努力することを信じて疑わないのだと思います。(そうであってほしい)
これクライミング版のBLUE GIANTできちゃうな、と思うほどです。

うちの息子はクライミングは好きですが、「世界を目指す」気持ちは全くなく、練習も週5が精いっぱい。昨日も一緒に練習に行くと「疲れた」「疲労がたまっている」と繰り返します。(45歳の私も疲労が抜けませんよ。12歳とは違った意味で)
疲れているところ練習を無理強いしてもけがをしそうなので、昨日は早々に切り上げましたが…宮本大はきっとそんなこと言わない。
それがいいとか悪いとかではなく、そこには決定的な違いがあるような気がします。

そして思うのです。
この「熱」は、才能や体力がもし伴わなかったとき、どうなるのだろうか?と。
下手の横好きという言葉はあるけれども、宮本大も、もし全く才能がなかったとしてもここまで熱を持ってやり続けられただろうか。
究極の才能がなくても、努力である程度のところまではいくのでしょうが…努力できる才能、のようなものもありますよね。
ここに私がぐるぐる考えている何かのヒントがあるような気がするのですよね。

音楽やスポーツなど、その他の世界もそうかもしれませんが、その上手さや強さが評価される場で熱を発揮するのと、そうではない「楽しむ」場での熱とでは、全くその熱の発揮仕方が変わってくるような気がします。
「好き」の方向がどちらへ向かうか。

映画の中で、タイトルの「BLUE GIANT」の意味が明かされるのですが、「あまりに高温なため赤を通りこし、青く光る巨星、青色巨星」のことなのだそうです。(秀逸ですね、このタイトル!)

赤を通り越すほどの熱…
もっと高く、高く、と本人が望む望まざる関係なくそう輝いてしまう星がきっとあるのでしょうね。

さて、そうじゃないフツーの星たちは、自分の「熱」をどうすればいいのか…今日ブログを書いただけでは考えはまとまりませんでした。
私の中でまだこの「衝動」「熱」への問いは続きそうです。

■映画『BLUE GIANT』
https://bluegiant-movie.jp/