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『ル・コルビュジエ 諸芸術の綜合』展

東京汐留にあるパナソニック汐留美術館で開催されている『ル・コルビュジエ 諸芸術の綜合 1930-1965』展に行ってきました。

ル・コルビュジエといえば、上野の西洋美術館の設計でも知られる近代建築の巨匠。
サヴォア邸やLC4シェーズロングなどの名作椅子のデザインでも有名ですね。

昔、インテリアコーディネーターの資格取得のための勉強をしているときに、当時の巨匠たちは、建築だけじゃなくて家具もデザインするのかーとおどろいたことが印象に残っているのですが。
コルビュジエは建築をベースに家具だけでなく、絵画・彫刻・タペストリーも制作していた!というテーマに興味を持ち、東京に行ったついでに見てきました。

シンプルな機能美から有機的なモチーフへ

コルビュジエといえば、装飾のない、シンプルな箱型の建築が印象的だったのですが・・・この展示を見て印象ががらりと変わりました。

活動後期になると、貝殻や流木などの自然にあるもののかたちに興味を持ち、「詩的反応を喚起するオブジェ」と呼んで絵画や建築にも取り入れようとしたのだそう。友人に贈ったという貝殻や、海辺で撮影された映像、自身が描いた抽象的な絵画などが展示されていました。

そこから、円熟期の代表作、カニの甲羅をかたどったと言われるロンシャンの礼拝堂に繋がっていくのですが・・・

昨年、デ・キリコ展に行ったときにも思ったのですが、このひとりの作家の人生を振り返り、作風の変化を眺めるって、めちゃめちゃ面白いですよね。
時代背景や人間関係、自分の思考などの変化から表現が変化していくのって、人間!って感じがしてとても魅力的。あんなきちっとした箱形の建物を設計していた人が、曲線だらけの、ステンドグラスなどもなんともかわいらしい礼拝堂を設計するのです。

自分の作風を変えるのって、勇気が必要だったんじゃないかなぁ。「どうしたの?コルビュジエらしくないじゃん」なんて言われることもあったでしょうね。

それでも、興味が移り変わり、アウトプットも変わっていくっていい。ここのところの私は、「変わらないもの」より「どんどん変化していくもの」に魅力を感じるのです。

何でも作っちゃう・・・ダヴィンチ的なすごさ

建築を中心に、その空間を豊かにするものとして家具・彫刻・タペストリーなどもデザインしたコルビュジエ。デザイン、という点では同じくくりになるのでしょうが・・・現代にそういう建築家さんっていらっしゃるのでしょうか?
家具まではイメージできますが、彫刻も作っちゃうってすごくないですか?
シンプルに、どこにそんな時間があるのだろう・・・?と思ってしまう。

ライターの私からしたら、今描いている3000字程度の「取材記事」はもちろん、キャッチコピーも、小説も、詩や短歌も、脚本も、あ、書道とかも?・・・ありとあらゆる「文字」に関することをやってしまうようなものなのでしょうね。

建築も文字に関することも、きっと理論とか計算に重みがあるものから、美的・感性の比重が大きくなるものまで、その振り幅なのでしょうね。私が美しい「書」を書くなんて想像もできないですが・・・それは自分の中で境界線を作ってしまっているだけかもしれない。

その壁を取っ払うことができたら・・・私の活動も面白い方へ変化していくのかなぁとぼんやり考えました。

建築と音・そして映像

展示会の最後のほうには、1958年ブリュッセル万博フィリップス館で公開された、コルビュジエがコンセプトを作ったという8分間の映像作品が上映されていました。これが面白かった!

建築とそこに反響する「音」にも興味を持っていたコルビュジエが、独特な形状の建物の壁に映像を映し出し、反響する音、照明、すべてをトータルで「体感」できるパビリオンをプロデュースしたのだそう。

今回の会場では、曲線の白い壁が設置されていて、そこに映像が映し出され、音響や照明も結構頑張って再現しようとされたんだと思う(失礼な表現・・・)
実際の何%くらい再現されていたのかは分からないですが、椅子に座って8分間じっとその「総合的な芸術」に身を浸していると、体がぞわぞわ、としました。

戦争を思わせる映像や、かわいい赤ちゃんの画像、建築・・・一見つながりがよく分からない映像に不穏な音楽や照明も合わさって、キューブリック的な「ぞわぞわ」を感じました。それがまっすぐのスクリーンじゃなくて、ゆがんだ壁に映るから、また不気味。でもそれがなんとも魅力的なのです。自分のいろんな感覚が使われている感じ・・・。

70年以上にこんなパビリオンがあっただなんて!これをリアルで体験された方が羨ましい。

想像以上に私の今年のテーマ「感」にぴったりの展覧会で、自分のこれからの活動についても考えるきっかけになりました。

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「ル・コルビュジエ 諸芸術の綜合 1930-1965」

【展覧会会期】
2025年1月11日(土)〜 3月23日(日):土曜日・日曜日・祝日は日時指定予約(平日は予約不要)
【主催】
パナソニック汐留美術館、朝日新聞社
【開館時間】
午前10時~午後6時(ご入館は午後5時30分まで)
※2月7日(金)、3月7日(金)、14(金)、21(金)、22(土)は夜間開館 午後8時まで開館(ご入館は午後7時30分まで)
【休館日】
水曜日(ただし3月19日は開館)
【入館料】
一般:1,200円、65歳以上:1,100円、大学生・高校生:700円、中学生以下:無料